インド北部を流れるガンジス川の全長はおよそ2,500kmです。ヒマラヤに源流を持ち、多くの支流と広い流域面積を持っている大河で、ヒンドゥー教徒にとって「聖なる川」という位置付けにあります。天界を流れていた川が、人々の祈りによって地上を流れるようになります。巨大であることから、地上を壊さないようシヴァ神が受け止めているという言い伝えがあります。
近年、都市人口が増加したことで汚染が深刻となっています。ここでは、ガンジス川の汚染と対策を紹介します。
ガンジス川について
インドに住む人々の沐浴場
ガンジス川の水は、全ての罪を洗い流すと信じられています。そのため、ヒンドゥー教徒にとって、この川で沐浴することは重要なことです。ガンジス川にはガートと言う大きな階段があります。彼らはその階段を使ってガンジス川に身を委ねます。一般的に、男性は腰に布をまくスタイルで、女性はサリーを着用したまま沐浴します。
また、ガンジス川の水は「決して腐らない」と言われており、観光客の中でも、お土産にガンジス川の水を汲んで持ち帰る人がいます。そのため、周辺ではペットボトルなどが販売されており、例えば、ガンジス川から離れた場所に住むヒンドゥー教徒にこの水を渡すとたいへん喜ぶと言われています。しかし、私たちにとってガンジス川の水は綺麗とは言えません。
水質汚染が進む
近年、ガンジス川は水質汚染が大きな問題となっています。2007年世界で最も汚染された川ワースト5位に入り、人間だけでなく(健康被害)ガンジスカワイルカなどの生物にも影響が及んでいます。短期間に大量の遺体が発見されたため、周辺地域で深刻な健康被害があると考えており、地元当局が調査をしています。
また、ガンジスカワイルカは絶滅危惧種で、水質汚染によってさらなる減少が心配されています。現在、インド政府や世界自然保護基金が保護に向けて力を入れています。
汚染の原因
生活・工業排水
インドの下水処理率は10%と非常に低く、生活排水による水の汚染が大きな要因で、汚染原因の7~8割は生活排水によるものと考えられています。インドの表流水の7割は汚染されています。インドでは工業排水を管理する対策がとられていないため、川に垂れ流しになっています。そのため、インドにある14の主要な河川と流域、そして地下水は汚染されていると言われています。ガンジス川はインドの人口の4割に水を供給する大切な役割がありますが、ガンジス川の水の8割は汚染されています。
水葬
2015年1月、ガンジス川に100対以上の遺体が発見されました。ガンジス川はヒンドゥー教徒にとって聖なる川で、亡くなったら母なる川にかえすという考えがあります。本来、火葬した後に遺灰を川に撒くのですが、子供や妊婦そして事故死の場合、火葬せずに遺体を流すようです。貧困を理由に火葬代を工面できず、焚き火で燃やした後に燃え残った遺体を流すこともあると言われています。
汚染の対策
ガンジスプロジェクト
インドの首相であるナレンドラ・モディ氏は、ガンジス川の浄化を約束しました。今までも、河川の浄化政策は行われてきましたが、汚職や管理不足などが原因で思うように成果が上がっていません。2014年7月に発表した国家予算案によると、ガンジスプロジェクトに203億7,000万ルピー(日本円で約333億7,000万円)を割り当てたと報告されました。さらに、ガンジス川の浄化だけでなく、水の豊かな土地から、水が不足している土地に供給する、河川の連結政策も掲げています。
まとめ
ガンジス川はヒンドゥー教徒にとって聖なる川ですが、排水や水葬などが水質汚染に繋がり深刻な問題となっています。ガンジスプロジェクトである連結政策が成功すれば、30の河川が繋がり、3,000の貯水施設ができれば多くの人々に綺麗な水を供給できます。今後のモディ首相の政策が注目されます。
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