「福島第一原発事故」によって日本には様々な箇所で大きな影響がみられました。福島県や東京都でみられた「水質汚染」もその影響のひとつです。
事故から時間は経過しましたが、現在の水質は問題ないのでしょうか。
東京都内の河川の水質
都内の河川は1960年代あたりから工業排水によって一度大幅に汚染されています。1970年代からは水質の悪化を食い止め、水質改善を目指すために原因である工場排水の規制を設けたり、下水道を普及させたりなどで、都内の河川の水質はなんとか持ち直しました。しばらくの間は水質も安定し、何事ありませんでした。
しかし、福島第一原発事故の影響で数種類の汚染物質が都内の河川で確認され、重度の水質の汚染が確認されました。ヨウ素、セシウム、ストロンチウムなどの放射性物質が観測され、一部地域では1000ベクレルを超える汚染になり、それらを摂取してしまうことで起こる内部被曝の可能性から、河川を水源としている水道水を飲み水として利用していいのかも危ぶまれるほどでした。そのため、水道水ではなく、関東周辺ではない地域で採水されたペットボトルに入った飲み水を確保する人がコンビニやスーパーを訪れ、飲料水が店の棚からなくなっている状態が連日続きました。現在は水質はかなり安定してきているといえます。しかし、山から流れてきた放射性物質を含んだ土砂がまだ川底に残っている箇所があり、未だに汚染度が高いままになっています。
放射性物質
セシウム、ヨウ素、ストロンチウムなどは人体に入り込むと内部被曝を起こす危険な物質であること、放射性物質のなかでは比較的計測しやすいなどの観点から調査の対象になり、事故後はたびたびニュースなどで取り上げられていました。
福島第一原発事故で放出されたなかでも特に危険なのは「ストロンチウム」です。ストロンチウムは人体に入ると骨に吸収されやすく、カルシウムに置き換わって骨の中から放射線を放出しつづけます。同じ放射性物質のセシウムと比較すると少量しか放出されていませんが、人体には特に危険な物質です。
東京湾の水質
東京湾は昔から汚いというイメージがどうしてもあります。都内の河川が工場排水で汚れ、その汚れた水が最終的に行き着く場所が東京湾なので当然かもしれません。河川の時と同じく1960~1970年代あたりに環境汚染はピークになり、湾内に生息していた生物が大幅に減少し、「死の海」とよばれていました。その後は環境保全と水質改善が積極的に行われ、段々と生物も増えはじめ、安定していました。
放射性物質を含んだ河川が流れこんだためか、福島第一原発事故の後はやはりかなりの量の放射性物質が確認されました。東京湾は水面に「顔つけ禁止」のルールを設け、利用者への配慮をするほか、入念な水質検査を年に数回検査して安全性の向上に努めていました。このほかにも大腸菌の検査、排水によって水に油膜が張っていないかなどの調査も行っています。
現在は沖合には放射性物質はあまり確認されていませんでしたが、河川の水が流れこむ河口付近では高い汚染度が観測され、放射性物質を含んだ土砂が河川の水によって運ばれてきたためとされています。
東京湾の魚
東京湾が汚いというイメージから「東京湾で獲れた魚は食べても問題ないのか」、「食べると内部被曝を起こすのではないか」という懸念がみられます。外国の一部地域の魚と比べると、実は東京湾の魚はかなり安全な状態にあるといわれ、農薬を大量に含有した野菜やタバコを何十本も吸うよりもよっぽど危険性は低くなっています。
ただし、内蔵はダイオキシンなどが堆積していることや極たまに変な味がする魚がいることもあるので、おかしいと感じたらすぐに廃棄しましょう。
おわりに
東京の河川と湾内の水質は事故前にかなり近づいてきているといえます。しかし、一部地域の川底に貯まったままになっている放射性物質を含んでいる土砂には注意が必要で、これからも水質検査などは定期的に確認したほうがいいでしょう
関連記事はこちら

水と暮らし~環境汚染から考える

最新記事 by 水と暮らし~環境汚染から考える (全て見る)
- 中国における深刻な水質汚染と飲水の問題 - 2016年9月18日
- 驚愕の汚染度!ガンジス川の汚染と対策 - 2016年9月11日
- なかなか知られていないダムによる水質汚染 - 2016年9月3日